シマノフスキ 12のエチュード Op.33
昨年のリサイタルで演奏したシマノフスキ 12のエチュード Op.33です。
シマノフスキはポーランドの19世紀後半〜20世紀初頭の作曲家です。
作風を時代ごとに分類できる面白い作曲家で、初期はショパンやシュトラウス、ブラームスなどに影響を受けた後期ロマン派の香りがする作風。私も4つのエチュードOp.4を演奏した事がありますが、和声の複雑さはありつつも情熱的な、親しみやすい響きとなっています。
この12のエチュードは1916年作曲の中期の作品です。シマノフスキは1914年、パリ、ロンドン、イタリアや地中海地方、北アフリカ等を旅しました。ロンドンではストラヴィンスキーと会っているそうです。
そして第一次世界大戦が始まると故郷へ戻り、彼は古代ローマや初期のキリスト教、オリエント(イスラム教など)の勉強に没頭したそうです。
その影響が、この頃の作品には現れています。ピアノ曲のメトープや仮面劇、交響曲第3番夜の歌、ヴァイオリン曲の神話など。同じ頃作曲された歌曲の歌詞を読んでみても、神秘的な題材が多いです。
この12のエチュードについて彼の発言は見つけられませんでしたが、やはりオリエンタリズムや印象主義の影響を感じさせます。
1曲1曲が非常に短く詩的で、神秘的な和声や複雑なリズムパターンは、同時期の作品にも似たような物があります。複雑な中にも、歌曲を思わせるような美しい旋律や、水や風、炎を思わせる音型、狂ったような踊りを思わせるリズム、鳥の鳴き声など、やはり作品からは神秘的な題材を思わせ、attaccaで12曲全てが繋がるように演奏される点を見ても、個人的には物語の要素を感じます。
12曲目では最後、複雑さを極めた音型がクライマックスで爆発し、混沌から無色を思わせるGの音だけで終わるという、個人的には宇宙の始まりや輪廻転生を感じるのですが…。シマノフスキは何を考えていたのでしょう。もっと彼の本や論文を読んでみたいです。
なかなか心臓のドキドキする作品ですが、本番は落ち着いて演奏出来たように思います。
彼の後期の作品は、ポーランドの民族的精神を感じさせる作風となるのですが…。どこかバルトークと似ていますね。彼の後期の作品もいつか勉強してみたいです。
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